身体から発見する演劇
ジャック・ルコック国際演劇学校 1981-83
編著 | 盛加代子 |
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判型 | B6頁:255 |
ISBN | 978-4-434-22491-1 |
発行 | 2016年10月 |
定価 | 1,980円(本体1,800円+税)
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私はジャック・ルコック国際演劇学校(École Internationale de théâtre Jacques Lecoq)の一九八一~八三年の卒業生である。卒業後も今日まで、演劇創作や演劇教育に携わってきたが、自分が物事を判断する上で、例え演劇以外のプライベートであっても、ある教育法に基づいていると感じる時が多い。自分の劇団を持ち、新しい演劇を探し続けていたヨーロッパでの二〇年間は勿論のこと、帰国して大学教育に携わるようになった今日、以前にも増してそのように感じている。その昔、パリで誰に聞いても分からない小さな演劇学校で、外国人である私が、日本では学ぶことができなかった「自分に真摯に向き合う姿勢」を学んだ学校が、ジャック・ルコック国際演劇学校だ。まるで秘密組織のような、知る人ぞ知る学校である。
この学校の大きな特徴は、学校の宣伝を従来行われている形では一切せず、卒業生の社会的活躍による口コミのみの、昔も、ジャック・ルコックが亡くなって一七年過ぎた今も同じく、世界中から学生がこの演劇学校に集まって来ることにある。毎年三〇人程度の卒業生が世界に散らばり、その後の彼らの社会的活躍によって学校の存在が知られることが、この学校の唯一の宣伝となる。来る者に劇創作の方法を教え、瞬く間に演劇の虜にする魔法を掛ける学校なのだ。通称Chez Lecoq(ルコック家)。本書ではルコック学校とする。
一九九九年一月にジャック・ルコックが亡くなったとき、これで閉校かと誰もが思ったであろう。この学校はジャック・ルコックという一人の天才教師が、独特の教育法を発明し経営していた学校だからだ。しかし、彼の死後も生前と同じように世界中から学生は集まって来て、毎年、卒業生を世界中に輩出し続けている。そして、彼の発明したルコック演劇教育法が、実は、彼無しでも成立することを、彼の死後、卒業生らがその活躍振りから証明してくれているのだ。それはルコック演劇教育法が、時代と共に常に進化し続ける「生きた方法論」として確立されているからだ。世界に類を見ない演劇教育法を、今でも世界中から学生が集まって来るこのパリの小さな学校の魅力を、自分の学生時代の記憶を辿りながら、あらためて分析しようと思った。本書はルコックの死後も世界一の学びの場として存在し続ける、パリの一演劇学校について記したものである。
- はじめに
- 手習いの演劇から発見の演劇へ
- どんな学校か
- どこにあるのか
- 入学試験は無いが…
- 授業料は
- フランスで認められていなかった学校
- 時間と年間プログラムと講師陣
- 卒業生の活躍
- 授業初日 一九八一年一〇月一二日 雨
- 動きの授業 (身体教育学、運動分析学、アクロバット)
- 〔日常生活の再演〕 一週目~四週目
- 自主授業 一週目~六週目
- 〔中性仮面〕 五週目~一〇週目
- 自主授業 六週目~一〇週目
- 入学試験結果
- 第二学期のクラス編成
- ルコックの運動分析学 第二学期
- 〔要素と質〕 一週目~二週目
- 自主授業 一週目~二週目
- 〔詩と絵画〕 三週目~四週目
- 自主授業 三週目~四週目
- 〔動物〕 五週目~六週目
- 自主授業 五週目~六週目
- 〔動物から人へ〕 七週目
- 自主授業 七週目
- 〔キャラクター〕 八週目~一一週目
- 自主授業 八週目~一一週目
- 〔自作仮面〕 一二週目
- 自主授業 一二週目
- 動きの授業 一週目~九週目
- 〔仮面〕 一週目~三週目
- 〔音楽〕 四週目~八週目
- 進級試験
- 個人面談
- 白塗りのパントマイムと身振り言語
- メロドラマと大胆な表現
- ギリシャ悲劇、群衆と英雄
- ブッフォン、社会性と神秘
- クラウン
- コメディア・デル・アルテ
- 卒業試験
- 何にでも終わりはある その終わりが見えかけたら次のやるべきことを見つけよ
- ベルギーで劇団設立
- スペインへ拠点を移す
- 帰国、そして現在に至る
- 私が目撃したルコック学校の卒業生たち
- おわりに