木下昭子句集
編著 | 木下保子 |
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判型 | 四六頁:50 |
ISBN | 978-4-434-25571-7 |
発行 | 2019年1月 |
定価 | 880円(本体800円+税)
在庫:○
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義母木下昭子は平成三十年八月三日に亡くなりました。一年で最も暑かった八月の夏日に冷房の効いた部屋で、私が子供たちに電話している声を聴きながら静かに息を引き取りました。九十六歳でした。
私が義母と暮らし始めていつの間にか四十年近くになります。その間、夫 木下正文を若くして突然亡くし、子供二人を抱かえ悪戦苦闘する私を、義母なりに懸命に支えてくれました。
思えば、義母自身も木下正位と結婚し、淑子と私の夫である正文を生んだものの、子供達がまだ小さいときに夫を結核に奪われ、義姉原田律子の家に身を寄せ、子供たちを育てました。大変な苦労だったと思います。東京医科大学の事務で働きながら、句会に入り、生涯俳句を趣味とし生きがいとしていました。
四十九日も過ぎ、少し落ち着いたころ、義母の部屋を眺めると、本棚に入りきれず山積みにされた沢山の俳句の季刊誌がありました。この中から義母の俳句のみを取り出すのは私には大変な作業で、どうしたらよいのだろうかと思い悩んでいました。
そんな時、孫の高松尚美さん宅に伺う機会がありました。彼女は義母自ら選んだ七十五句の句集と、初めて海外に行った時のヨーロッパ旅行記を持っていて、私に返してくれました。これは母の天からの助けだと思い、沢山の季刊誌を整理する代わりに、本を発行することを決めました。それらに写真と晩年の句を追加し製本しました。
義母の不屈の精神、どんな時も前向であることは、すばらしいものでした。
義母は、与えられた人生を見事に全うしたと思います。
嫁ですが、拍手を送りたいと思います。
句集を読んでいただければ、母もあの世で、恥ずかしそうに喜んでいると思います。
平成三十年十一月十三日 木下 保子