改訂版 わかりやすい自分史の手引き
出版について学びながら
編著 | 池田勝徳 |
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判型 | B6頁:192 |
ISBN | 978-4-434-26828-1 |
発行 | 2019年11月 |
定価 | 1,802円(本体1,636円+税)
在庫:○
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先般出版しました『自分史の手引き』が、多くの読者の目にとまって残り少なくなったので、「増刷」をしたいとの話を出版社の方からいただいたのでした。そこで折角のこの機会に、執筆者の生活基盤である「日本社会の動向」を視野に入れられたら、よりわかりやすく「自分史」を纏めることができるし、読む人にも理解しやすいと考え、『改訂版 わかりやすい 自分史の手引き』として今般出版することにしたわけです。では本著と初版とでは、具体的にどのような点で違った内容となっているのかですが、初版では記載していなかった「A.自分史の執筆に役立つ日本社会の変貌」を追加した点です。何故、この項を追加したのかということについて、簡単に説明しておきたいと思います。
初版をご覧いただくとお分かりのように、「C.自分史の書き方、その手順」に続けて「付録(年表)」を記載しています。この「付録」を熟読吟味していただくことで、「昭和初年から令和元年」に至る、約百年間の執筆者ならびに読者の生活基盤・社会構造の変化や動きを読みとることは可能です。しかしながら、年度ごとに生起している出来事や事件などを断片的に記載したそれらからは、何故その出来事・事件が起こったのかなどまで把握することは非常に難しい上に、それを踏まえての「自分史」の執筆となるとなかなか骨が折れます。そこでその煩わしさを解消して、スムーズにご自身の生活を思い出しながら執筆できるように、ご自身が生活されてきた時代・背景を連続的に把握し、それを前提に巻末の記載事項から記憶を蘇らせながら執筆したり、購読いただくのがベストと考えたわけです。
そして今一つが、「自分史」を纏めようと考えておられる人の中心は、退職したり定年を間近に控えた人達といえるかと思います。その人々に直接的、間接的に大きな影響を与えてこられたのが、ご両親およびそのもとで生活してこられた周囲の人々で、明治以降の100年間と考えられ、その間には次のような大きな社会変化がありました。その変化を①「封建社会の崩壊による明治政府の成立から第二次大戦の敗北」までと、②「高度経済成長後の高齢化社会とITなど急激な情報社会」として大きく整理しました。特に②のⒶでは、朝鮮戦争を節目と捉え、戦前のさまざまな残骸を止揚して高度経済成長へと発展していく時期と、生活基盤が農業から第二次産業、第三次産業に移行し、新しい社会、高度資本主義社会への準備期として。そしてⒷで、高度経済成長によって単に経済的な側面だけではなく、医療をはじめITなどの高度先端機器や知識が発展し、それによって生活のさまざまの面に大きな変化が起こっていく時期として整理しました。こうした明治以降の社会構造、生活基盤の変化を踏まえ、巻末の「年表」に記載した諸々の事件や出来事を手掛かりにして、ご自身を振り返られることで、一層ご自身の記憶が鮮明になるだけではなく、読者にとっては記載されている内容なども理解しやすくなると思われます。
しかしながら初版では、この点までを充分に考慮していたとはいえなかったために、この増刷の機会に追加したわけです。しかし、それ以外の『自分史』を出版することの意義などについては初版で記載していて、ここで繰り返すのも何ですが、強いてと言えば「人生百年時代」という言葉が、いっそう定着してきたといえることです。そのため「自分史」や「自伝」は、前にもまして誰しもが平等にしてかつ簡単に伝え、残せる貴重な財産・手段になっているように思うのですが、それでもその主流はやはり文章の形態が中心といえるかと思います。しかしだからといって、やみくもに書き始めれば誰でも容易に書けて、作品になるのかといいますと決してそうではないと思うのです。書くためにはまず入念な準備が必要であり、そのためにどれだけの時間をかけ、汗をかいて準備をなされてきたかが、その書籍としての良し悪しの分かれ目だとよく言われますが、私もそのとおりであると思います。そして記載内容が正確であれば、その時には気付かれなくとも歴史上の人物が述べ、また指摘しているように、必ずその間の生活の中に「さまざまな貴重な、後日の問題解決のヒントや方向性」が内包されていたとしています。
こうした点を念頭に、私自身の過去40年余りの大学での指導や執筆・出版の経験を踏まえて、では最低どのようなことに注意し、また何を心掛け、どのように執筆なさる必要があるのかなどを、改めて纏めたのがこの「自分史」です。そうした意図の下に整理した、本著の「Aの項目」を踏まえて購読なさってご執筆いただければ、「著者・筆者冥利」と申しあげても過言ではありません。そしてまたそれによって、一層自分史を書きたい、纏めたいとの思いが強くなり、その「切っ掛け」となって、強い執筆への後押しとなれば望外の喜びです。
なお、巻末の年表は (株) 翔雲社の鈴木光君の手になることを紹介し、併せて感謝します。
- まえがき
—人口減少・高齢社会および高度情報社会への構造的変化—
- (1)明治から第二次大戦敗北までの日本の社会
- (2)敗戦後の日本の社会とその変貌
- A. 敗戦から高度経済成長まで
- B. 少子高齢化社会と高度IT化、情報社会の訪れ
—自分史の制作とその意義—
- (1)書籍の出版概要
- (2)自分史執筆の留意点
- ①なぜ自分史・自叙伝を書くのかを明らかにする
- ②人生のターニングポイントとなった「出来事」を見つける
- ③人生における「共通点」を見つける
- (3)自分史制作の準備とその意義
- (1)基本的な出版形態と出版社の視座
- 「自費出版」
- 「企画出版」
- 近年の出版業界について
- (2)執筆・出版上の心得
- 編集者の役割とは
- (3)編集者と執筆者の主な仕事
- 編集者の仕事
- 執筆者の仕事
- 「校正」「校閲」作業について
- 原稿執筆の5つの基本
- (4)出版契約の締結
- 出版契約の締結上の留意点
- 印税について
- 書籍を出版する際の心構え
- 「自分史」を出版するということ
- (5)書籍各部の名称と制作工程
- (a)書籍各部の名称
- (b)制作の基本的な流れとその内容・事柄
- ①原稿の搬入
- ②原稿の種類
- ③書籍のサイズと内容による分類
- ④文字の大きさと種類
- ⑤書籍用紙について
- ⑥表紙や見返し、カバー用紙の選択
- ⑦印刷と製本について
- (6)その他の基本的な用語・事項
- (7)校正と校閲、推敲について
- (a)校正でのチェックポイント
- (b)推敲上のチェックポイント
- (1)自分史制作のコツ
- (2)書籍の基本事項
- (a)表紙、用紙の選び方
- (b)自分史の出版形態
- (3)資料の収集と執筆の準備
- (4)執筆における7つの留意点
- 1.「自分史」作成の目的と意図
- 2.年表や家系図
- 3.ライフサイクル
- 4.「自分史」のスタイルと資料収集
- 5.「目次」「見出し」と「文章構成の基本」
- 6.文章の7原則
- 7.推敲と校正
- (5)家系図とその作り方
- (a)家系図とは
- (b)家系図の作成に必要なもの
- (6)主要なライフステージとそこで記載したい事項
- 1.誕生
- 2.幼少期
- 3.小学校・中学校時代
- 4.高校時代
- 5.大学、短大、専門学校時代
- 6.社会人となって
- 7.結婚と家庭生活について
- 8.子供の誕生
- 9.子育て、子供の学生時代
- 10.子供らの結婚と孫の誕生
- 11.終活
- 12.その他
- (7)年表とその作成
- 主要参考資料・文献
- 1926年~2019年(大正15年~令和元年10月)