周りが変われば、子どもは変わる!
発達に課題を感じる子どもの可能性を伸ばすために
著 | 齋藤澄子 |
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判型 | 四六頁:239 |
ISBN | 978-4-434-28917-0 |
発行 | 2021年5月 |
定価 | 1,800円(本体1,636円+税)
在庫:○
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児童は一年のうち三分の二は学校に通い、一日の大半を学校で過ごしている。全ての子どもたちが楽しい学校生活が送れるようにと、学校は懸命の努力を傾けているが、子どもの中には必ずしも学校生活を楽しんでいるとは言えない子どもがいることも事実である。「学校が楽しい」と心から思えない子どもの中には、自分の思いがうまく伝えられなかったり、相手の気持ちがよく分からなかったりすることから、学校という集団生活の中でコミュニケーションに課題を感じている子どもが少なくない。いわゆる「発達障害」と言われる子どもたちもその中に含まれている。
筆者は、長年にわたる小学校の教員生活の中で、いろいろな児童や保護者と出会い、こうした発達に課題を感じる児童やその保護者との関わりから多くのことを学んできた。現実の事例から、理論的な説明やマニュアルでは得られない多くの気付きを得てきた。本書は、このような筆者の体験に基づいた学びを、発達の課題を抱えた児童の保護者や学校関係者の問題解決に向けた一助となるように企画された。ここに書かれた内容が学校の先生方や保護者の参考となり、結果的に子どもの「安心」に繋がれば、子どもの成長をもたらすことができるのではないかと期待している。
本書の特徴は、発達の課題を抱えた子どもに対して、教師あるいは保護者単独ではなく、教師と保護者両者の実践を基にした内容であるという点にある。保護者だけががんばっても教師だけががんばっても、子どもはなかなかよくなっていかない。しかし両者の歯車が嚙み合った時に、子どもはよりよく伸びていくということを私たちは体験を通して学ぶことができた。
本書の協力者である河西氏は、お子さんの発達の偏りを指摘され大変驚いていたが、すぐに子どものために「何ができるか」「何をすべきか」を考え実践してきた保護者である。河西氏の保護者としての思いや願い、「どのように子どもを支え育んできたのか」という歩みを、発達障害児の育児や教育に関わる保護者や学校関係者に是非読んでもらいたい。そして、保護者と教師の連携について考えるきっかけにして欲しい。
学校は、今や学級担任が一人で課題を抱えるのではなく、「チーム学校」で対応する時代であると言われている。保護者と「チーム学校」の在り方次第で、子どもは変容する。本書の題名『周りが変われば、子どもは変わる!』には、これまで発達に課題のある子どもにばかり「がんばれ、がんばれ」と言い続けてきた保護者や教師たちに、角度を変えて「これまでの自分の考え方や対応を少し変えてみて欲しい」という願いが込められている。子どもの無限の可能性を引き出し伸ばしていくためには、まず保護者や教師が変わらなくてはならない。保護者や教師の子どもへの対応が変われば、周りにいる人たちを変えるきっかけになるであろう。そのようにして子どもを取り巻く環境が変われば子どもは必ず変わっていく。発達障害であることより、自分が理解されないストレスによる二次的障害に悩む子どもたちが一人でも減るように、この本を発達障害児の家族や学校関係者に読んで欲しい。
本書によって、保護者には教師の思いが、教師には保護者の思いが、うまく伝われば幸いである。
令和三年春
齋藤 澄子
- ~みんな違ってみんないいというけれど~
- 一 学級担任として
- 1 出会い
- 2 入学式の日の出来事
- 3 給食の時のこと
- ①みかんは苦手!
- ★コラム1 匂いに敏感な子ども
- ②痛かった給食
- ★コラム2 できない! でもあきらめたくない!
- 4 家庭訪問
- 二 先生、はじめまして(河西)
- 1 忘れられない入学式
- 2 給食に「みかん」
- 3 家庭訪問
- 《育児メモから》
- 三 小学校生活の中で
- 1 授業中の活躍
- ①早く勉強したい!
- ★コラム3 手を挙げないで発言してしまう子ども
- ②友達の気持ちを考えること
- ★コラム4 本当のこと、言ってはいけないの?
- 2 保健室通い
- ★コラム5 保健室は心と体の避難場所?
- 3 友だちとの関わりの中で
- 4 二年生になって
- 【エピソード1】 そこ、どいて!
- ★コラム6 保護者に教育相談や受診を勧めるタイミングについて
- 1 授業中の活躍
- 四 何かおかしい?うちの子、発達障害?(河西)
- 1 うちの子は普通です!
- 2 兄弟誕生
- 3 進級と不安な日々
- 4 教育相談に行くきっかけになった友達のケガ
- 5 これからどうすればいいの?
- ~保護者や担任が実践するとよいこと~
- 一 理解と支援を求めて(河西)
- 1 通級指導教室との出会い
- 2 通級指導教室での指導の実際
- 3 もう一つの通級指導教室
- 二 発達に課題を感じる児童への支援と指導の実際
- 1 通級指導教室の利用
- 【エピソード2】 病気にしないで!
- 2 個に応じた指導・支援を推進すること
- 【エピソード3】 掃除をしないKさん
- 3 発達に課題を感じる個々の児童への具体的な指導・支援
- 4 周りの子どもたちの理解を求め、協力者にすること
- 【エピソード4】 バケツ紛失事件
- 5 クラスワイドな支援から個別支援へ
- 1 通級指導教室の利用
- 三 Aの葛藤と成長(河西)
- 1 転校
- 2 お母さんに心配かけたくない
- 3 Bのこと
- 4 家族の絆
- 5 Aの成長
- 6 自分で決めた道
- 四 よりよい教師と保護者の連携とは
- 1 保護者が頼りにしているのは誰か
- 2 担任と保護者が繋がるために
- 【エピソード2】 病気にしないで!
- 2 個に応じた指導・支援を推進すること
- 【エピソード5】 衝動性の高いUさんの保護者との連携
- 3 子どもを変える教師と保護者の連携のポイント
- ① 学校での出来事をどのように共有するのか
- ② 情報共有について
- 【エピソード6】 保護者からの連絡で謎が解けた!
- ③ 個人情報の開示
- ~発達に課題を感じる子どもをよりよく支援する方法~
- 一 一人で抱えないネットワークづくり(河西)
- 1 保護者同士のつながりを求めて
- 2 Bの保育園入園
- 3 『親の会』の立ち上げ
- 4 『親の会』の取り組みから
- 二 子どもの可能性を伸ばす環境を求めて(河西)
- 1 魔法の黄色い箱
- 2 就学に関しての出来事
- ① 学校見学
- ② 就学時健康診断
- ③ 通常の学級か、特別支援学級か
- 3 ピカピカの一年生
- 4 転籍
- 5 通常学級での出来事
- 6 合理的配慮
- 三 子どもの安心や可能性を高める学校の対応とは
- 1 発達障害の児童が入学してくる時の学校の対応について
- ① 就学時健康診断
- ② 入学式
- ③ 登下校
- 2 交流学習
- ① 交流学習の目的
- ② 交流学級の子どもたちへの指導
- 3 転籍
- 1 発達障害の児童が入学してくる時の学校の対応について
- 四 保護者から支援員へ(河西)
- 1 新たな挑戦
- 2 実際の学校現場で
- 五 学校の支援体制とチーム学校
- 1 校内支援体制の構築と活用
- ★コラム7 特別支援教室の設置と活用
- 2 特別支援教育の対象となる子どもとは
- 3 チーム学校を活用して
- 1 校内支援体制の構築と活用
- 六 周りが変われば、子どもは変わる!
- 1 特性を障害にしないために
- 2 家族が変わる
- 3 学級が変わる
- ☆ 保護者から保護者へ
- ☆ 元教師から保護者へ
- ☆ 保護者から教師へ
- ☆ 元教師から教師へ
- ☆ この本を手にしてくださったみなさんへ