社会的養護Ⅰ・Ⅱ 改訂版
監修 | 小宅理沙 |
---|---|
編著 | 中典子 潮谷光人 今井慶宗 |
判型 | B5頁:242 |
ISBN | 978-4-434-30257-2 |
発行 | 2022年4月 |
定価 | 3,058円(本体2,780円+税)
在庫:○
|
保育士養成校においては、2019(平成31・令和元)年度からこれまで「社会的養護」「社会的養護内容」として開講されてきた科目が「社会的養護Ⅰ」「社会的養護Ⅱ」として開講されることとなりました。
「社会的養護」の目標は、2018(平成30)年度まで「①現代社会における社会的養護の意義と歴史的変遷について理解する」「②社会的養護と児童福祉の関連性及び児童の権利擁護について理解する」「③社会的養護の制度や実施体系等について理解する」「④社会的養護における児童の人権擁護及び自立支援等について理解する」「⑤社会的養護の現状と課題について理解する」でした。2019(平成31・令和元)年度からの「社会的養護Ⅰ」では、そのうち、②が「子どもの人権擁護を踏まえた社会的養護の基本について理解する」、④が「社会的養護の対象や形態、関係する専門職等について理解する」というように再編されました1)。
そして、「社会的養護内容」の目標は、2018(平成30)年度まで「①社会的養護における児童の権利擁護や保育士等の倫理について具体的に学ぶ」「②施設養護及び他の社会的養護の実際について学ぶ」「③個々の児童に応じた支援計画を作成し、日常生活の支援、治療的支援、自立支援等の内容について具体的に学ぶ」「④社会的養護にかかわるソーシャルワークの方法と技術について理解する」「⑤社会的養護を通して、家庭支援、児童家庭福祉、地域福祉について理解や認識を深める」でした。2019(平成31・令和元)年度からの「社会的養護Ⅱ」では、「①子どもの理解を踏まえた社会的養護の基礎的な内容について具体的に理解する」「②施設養護及び家庭養護の実際について理解する」「③社会的養護における計画・記録・自己評価の実際について理解する」「④社会的養護に関わる相談援助の方法・技術について理解する」「⑤社会的養護における子ども虐待の防止と家庭支援について理解する」となりました2)。
これらのことから、子どもの最善の利益を考慮した支援、家庭養護の実際、子どもへの虐待防止に向けての子育て支援の充実について、今まで以上に学ぶ必要があると考えられるようになりました。また、2019(平成31)年4 月1 日に「児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律」が公布・施行されたことから、わが国の子どもと子どもを取り巻く環境に対する支援(特に親支援)が必要になってくると感じたところでした。
2019(令和元)年10月10日に、私たちは、以前に出版しました『社会的養護・社会的養護内容』にもとづいて編集し、子ども理解を重視した内容として『社会的養護Ⅰ・Ⅱ』を出版しました。しかし、出版後、シラバスを確認していくうちに、「社会的養護における保育士等の倫理と責務」「被措置児童等の虐待防止」「社会的養護と地域福祉」「施設等の運営管理」「社会的養護に関わる専門的技術」についての内容について、充実を図る必要性を感じました。そこで、『社会的養護Ⅰ・Ⅱ』の内容にこれらの内容を加筆・修正し、本書『社会的養護Ⅰ・Ⅱ(改訂版)』を作成することになりました。
本書『社会的養護Ⅰ・Ⅱ(改訂版)』は、『社会的養護・社会的養護内容』や『社会的養護Ⅰ・Ⅱ』と同様に、引き続き「社会的養護Ⅱ」が「社会的養護Ⅰ」の学びを実際の場面で生かすことができるように構成しています。守秘義務の関係上、架空事例を用いて事例が提示されているものもありますが、当事者の許可を得て示した実例をも含んでおります。これは、本テキストを利用してくださる皆様に、支援のあり方に関する理解を深めることにもなると考えたからです。
『社会的養護・社会的養護内容』『社会的養護Ⅰ・Ⅱ』に引き続き、『社会的養護Ⅰ・Ⅱ(改訂版)』にも様々な事例を提示しています。このような事例を読み、理解を深め、皆様の社会的養護についての学びが深まることを願います
2022年4月1日 中 典子
- はじめに
- 1.社会的養護が求められる背景
- 2.社会的養護が目指すもの
- 3.社会的養護における保育士の役割
- 1.外国における社会的養護の歴史
- 2.日本における社会的養護の歴史
- [コラム]四箇院の制
- 1.「子どもの権利条約」の誕生
- 2.「子どもの権利条約」の内容
- 3.「子どもの権利条約」と社会的養護との関連
- 4.「子どもの権利条約」批准後の課題
- 5.社会的養護における子どもの権利保障のための取り組み
- [コラム]虐待の淵を生き抜いて
- 1.社会的養護の理念
- 2.社会的養護の基本的な考え方
- 3.社会的養護における保育士等の倫理と責務
- [コラム]北欧の国際養子縁組からみるグローバル化
- 1.社会的養護の法制度
- 2.社会的養護の関連機関
- [コラム]フィンランドの子ども議会
- 1.措置制度
- 2.利用契約制度
- 3.被措置児童等の虐待防止
- 4.社会的養護と地域福祉
- 1.里親制度
- 2.小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)
- 3.養子縁組制度
- 1.養護系施設
- 2.障害系施設
- [コラム]生活保護世帯と児童養護施設の自立
- 1.社会的養護の専門職のあり方
- 2.各施設に置かなければならない職員
- 3.専門職の名称と職務
- 1.社会的養護の展開過程
- 2.家庭調整の方法
- 3.虐待の再発防止の方法
- 1.子どもへの自立支援の充実
- 2.子育て関連の問題発生の予防
- 3.施設等の運営管理
- 1.ソーシャルワーク(相談援助)と保育者
- 2.社会的養護における保育者の役割
- 3.バイスティックの7原則
- 4.言語的・非言語的なかかわり
- 5.ジェノグラムとエコマップ
- 1.里親による養育の実際
- 2.ファミリーホームによる養育の実際
- 1.乳児院での乳児支援の実際
- 2.児童養護施設での子ども支援の実際
- [コラム]子どもへの性的虐待――影響と援助
- 3.児童心理治療施設(情緒障害児短期治療施設)での子ども支援の実際
- 4.児童自立支援施設での子ども支援の実際
- [コラム]児童養護施設からの大学進学
- 1.障害のある子どもの療育と支援の実際
- 2.障害児通所支援事業所での子どもの療育と支援の実際
- [コラム]医療型障害児入所施設における訪問教育
- 1.障害者支援施設での利用者支援の実際
- 2.障害福祉サービス事業所での利用者支援の実際
- [コラム]海外福祉研修のすすめ―障がい者の地域生活に課題を感じて
- おわりに