記憶から思考への道
世界は記憶で埋め尽くされている
思考は基本的には記憶を素材として、基礎として成り立っているとしていいであろう。しかし、デカルト以来、近代哲学は絶対的真理を求めるとして、記憶を排除してきたのである。記憶はあいまいで、忘却により無化し、絶対的真理を求めるうえで不必要、入ってはいけないものとされてきたのである。カントの先手的、先験的という概念も、経験からの記憶を取り除いたものとして存在しているのだ。しかし、デカルトの絶対的真理の出発点とされる「我思う故に我あり」も「我思う」を記憶していて、はじめて成立しているはずである。日常生活においては、読者も、一字一句を記憶しながら進んでいるはずである。
著 | 深井了 |
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判型 | A5頁:708 |
ISBN | 978-4-434-30714-0 |
発行 | 2022年12月 |
定価 | 2,090円(本体1,900円+税)
在庫:○
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序 論
第一章 世界と記憶と意味
- 一.人間の中の原動力と記憶
- 二.必要=力=意味
- 三.対象と必要=力=意味
第二章 対象の意味
- 一.対象は一つだけか
- 二.記憶と意識
- 三.現象と記憶
- 四.同一性直観
第三章 記憶と表象
- 一.表象の現れ方
- 二.表象の記憶からの独立
- 三.表象の浮かび方
- 四.意味と表象の変形
- 五.定まらない表象
- 六.代表となる表象
- 七.まとめとこれからの展望
第四章 忘却の構造
- 一.特別な記憶と忘却
- 二.繰り返しの中の忘却
- 三.特別なシーンの表象と忘却
- 四.必要=力=意味と忘却
第五章 表象の変形
- 一.現象から記憶へ保存された時の表象の変形
- 二.忘却による表象の変形
- 三.必要=力=意味による記憶表象の変形
- ⓐ 食 欲
- ⓑ 性 欲
- Ⓒ 仕 事
- ⓓ スポーツ
- ⓔ 日々の生活
- ⓕ まとめ
- 四.想像力による表象の変形
- ⓐ 幼児期の想像力
- ⓑ 小説の中での想像力による表象の変形
- Ⓒ 〝真似る〟
- 五.表象と意味
- ⓐ 浮かんでくる表象はただ一つだけか
- ⓑ 必要=力=意味と表象
- ㋐ 食欲と表象
- ㋑性欲と表象
- ㋒ スポーツと表象
- ㋓ 仕 事
- ㋔ 日々の生活
- ㋕ 勉 強
- Ⓒ 表象と意味の一致と不一致
- 六.表象概念の見直しと拡大
- ⓐ 絵 画
- ⓑ 音 楽
- Ⓒ 文 学
- ㋐ 小 説
- ㋑ 童 話
- ㋒ 短歌、俳句
- ㋓ 詩
第六章 思考への基盤
- 一.記憶を引き出す思考
- ⓐ「これなあに?」… 同一性へ
- ⓑ 差異性の追求
- Ⓒ 類似性
- ⓓ 同一性、差異性、類似性
- 二.言語と表象
- ⓐ 単 語
- ㋐ 名 詞
- ㋑ 形容詞
- ㋒ 動 詞
- ⓑ 語の連なり
- ㋐ 修飾語+名詞
- ㋑ 主語の名詞+述語
- ⓐ 単 語
第七章 思考への第一歩
- 一.同一性と思考
- 二.差異性と思考
第八章 生活の中での思考
- 一.了解性の崩れからの思考
- 二.現象の変化からの思考
- 三.記憶を引き出すだけの思考?
- 四.記憶だけを使った推測
- 五.意味を引き出す
第九章 了解性と思考
第十章 了解性と対象=意識と思考
- 終わりに
- 参考文献