意匠設計者必携 (時間判定法)
避難安全検証法 実践マニュアル
-企画設計から審査対応まで 実例から学ぶ用途別要点-
著 | 九門宏至 |
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判型 | B5頁:232 |
ISBN | 978-4-434-32699-8 |
ISBN | 978-4-910135-06-9(POD) |
発行 | 2023年9月 |
定価 | 3,960円(本体3,600円+税)
在庫:○
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2000年に避難安全検証法が施行されて20 年以上が経ちました。いろいろな建物の設計に利用されるようになり、街を歩いても、それとわかる建物を見かけます。特に、郊外型の中小規模店舗では、新築の建物のほぼ全てに利用されているように思われます。
しかし、多くの設計者にとって避難安全検証法は単なるコスト削減の手法と受け止められており、法の盲点を突いた設計や、避難安全検証法の理解不足からくる不適切な設計も多くみられます。
避難安全検証法は、設計者が防災計画の基本を理解した上で利用されることを前提として作られています。正しい防災計画を立てずに、計算だけを成立させた計画ではかえって危険な設計となってしまいます。そういった計画に対し、本来は建築検査機関や行政が問題点を指摘する立場であるはずです。ところが、防災計画評定がなくなった現行法規では、彼らにはそこまでの責任と権限は与えられていません。その結果、非常に不安全な建物が建設されています。また、審査者の知識不足や思い込みによる指導指示や、地域や検査機関による解釈の相違が、避難安全検証法の運用そのものに混乱を生じさせているように思われます。
本書では、避難安全検証法を正しく理解し、有効に活用していただくために、防災計画の基本から避難時間判定法(ルートB1)の基本的な流れと利用上のポイントについて解説します。また、新しく取り入れられた区画避難安全検証法についても触れています。なお、2021 年5 月に施行された煙高さ判定法(ルートB2)につきましては、後日改めて解説したいと考えております。
そして、この20 年間に2,600 件以上の避難安全検証の申請業務に関わってきた筆者の経験から、実際の申請・審査場面での注意点や問題点を、実例を挙げて紹介します。また、建物の用途別に検証の要点を丁寧に解説し、実務に役立てていただけるよう構成しました。
また、最終章では、筆者らが開発した避難安全検証法計算ツール「SED」について紹介しています。「SED」を利用すると避難安全検証法の計算が簡単になるだけでなく、仕様設計についても、防災上の問題点を洗い出すことができます。無料で体験できる試用版もありますので、興味をお持ちいただいた方はぜひ一度お試しください。
避難安全検証法は、正しく扱う知識が身につけば、仕様設計では気付かなかった火災安全の盲点を明らかにでき、コストをかけずに安全性能の高い建物を実現できる優れた法律です。コスト削減のためだけでなく、仕様設計にも活かしていただきたいと思います。
本書が、設計者、審査を行う技術者の一助になれば幸いです。
2023年9月吉日 九門宏至
- はじめに
- 1.避難安全検証法でできること
- 2.避難安全検証法が有効な建物
- (1)主要構造部の制限
- (2)避難安全検証法の制約
- (3)適用用途
- 3.防災計画の要点
- (1)二方向避難の確保
- (2)避難経路の構成
- (3)安全区画
- (4)避難施設の防火防煙
- (5)人間の心理、生理に配慮した計画
- (6)障害者に配慮した計画
- (7)避難計算
- 4.避難安全検証法(ルート B1)による安全性能の確認
- (1)検証の流れ
- (2)避難安全検証法の基本原理
- 1.火災の発生のおそれの少ない室
- 2.居室検証
- (1)居室検証の流れ
- (2)計算の手順
- 3.階検証
- (1)階検証の流れ
- (2)計算の手順
- 1.全館避難安全検証の流れ
- 2.計算の手順
- 1.区画避難安全検証法とは
- 2.居室検証
- (1)居室検証の流れ
- 3.区画検証
- (1)区画検証の流れ
- 1.仕様設計でも防災上の問題点を解決する避難安全検証法
- 2.法の理念は「煙に曝されずに避難できること」
- 3.理解に苦しむ法解釈
- 4.避難安全検証法の残念な状況
- 5.検査機関の審査担当者は必ずしも防災計画の知識があるわけではない
- 6.目先の利益のみが優先される今の日本社会
- 7.明日は我が身
- 1.郊外型ドラッグストア(小規模物販店)
- (1)検証の前提となる数値
- (2)押さえるべきポイント
- (3)ポイントのまとめ
- (4)プランニングで気を付けたいこと
- 2.スーパーマーケット(中規模物販店)
- (1)検証の前提となる数値
- (2)押さえるべきポイント
- (3)ポイントのまとめ
- (4)プランニングで気を付けたいこと
- 3.ホームセンター(大規模物販店)
- (1)検証の前提となる数値
- (2)押さえるべきポイント
- (3)ポイントのまとめ
- (4)プランニングで気を付けたいこと
- 4.自動車販売店(自動車ディーラー)
- (1)検証の前提となる数値
- (2)押さえるべきポイント
- (3)ポイントのまとめ
- (4)プランニングで気を付けたいこと
- 5.事務所(研究施設)
- (1)検証の前提となる数値
- (2)押さえるべきポイント
- (3)ポイントのまとめ
- (4)プランニングで気を付けたいこと
- 6.物流センター(仕分け作業を伴う倉庫)
- (1)検証の前提となる数値
- (2)押さえるべきポイント
- (3)ポイントのまとめ
- (4)プランニングで気を付けたいこと
- 7.工場
- (1)検証の前提となる数値
- (2)押さえるべきポイント
- (3)ポイントのまとめ
- (4)プランニングで気を付けたいこと
- 8.食品加工工場
- (1)検証の前提となる数値
- (2)押さえるべきポイント
- (3)ポイントのまとめ
- (4)プランニングで気を付けたいこと
- 9.避難安全検証法(ルートB1)の適用が難しい用途
- (1)住宅
- (2)宿泊施設(ホテル・旅館等)
- (3)学校(小・中・高等学校等)
- (4)劇場等(床段差がある室)
- (5)竪穴区画の適用除外
- 1.SED の特徴
- 2.SED の機能
- 3.申請書作成時の注意事項
- (1)申請図面の整合性
- (2)面積の求積
- (3)在館者密度、積載可燃物の発熱量の根拠
- (4)避難階で避難には利用できない扉
- 4.コンサルタントの活用
- 5.使用環境
- 参考文献
- おわりに