古の日本(倭)の歴史
一介のゲノム科学者による新しい日本古代史
著 | 藤田泰太郎 |
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判型 | A4横頁:320 |
ISBN | 978-4-434-34663-7 |
発行 | 2024年12月 |
定価 | 3,300円(本体3,000円+税)
在庫:○
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『古の日本(倭)の歴史』とは、縄文時代晩期に入る3,000 年前頃からの気候の寒冷化により南朝鮮(南韓、現在の大韓民国)の倭人(西日本縄文人)が華北人、江南人と朝鮮人(高句麗系)の南下に圧迫され列島へと帰来する、すなわち任那が滅亡し日本(列島)と朝鮮(半島)が地政学的かつ文化的に分断されるまでの歴史と捉えられる。この帰来がスサノオ(素戔嗚尊)の出雲侵攻やその後裔者(神武・饒速日・崇神など)による度重なる東征を引き起こし、飛鳥時代に日本国が成立するまでの過程が倭の歴史で、その過程が記されたのが『古事記』と『日本書紀』(『記紀』)である。
『魏志倭人伝』には「3世紀の古の日本(倭)には、女王卑弥呼の都とする邪馬台国があり、卑弥呼が死去すると塚がつくられ、100 人が殉葬された」とある。とはいえ、『記紀』には、邪馬台国や卑弥呼に関する記述が一切見られない。また、銅鐸を祭祀として用いたと思われる大国主の国(大己貴の国)も全く無視されている。奈良県桜井市には、2世紀末から3世紀初めにかけて急速に発展した纒向遺跡がある。その遺跡内に最初の巨大な前方後円墳である箸墓(=大市墓)が威容を見せる。この箸墓の被葬者は定かでないが、『日本書紀』の「箸墓伝承」や宮内庁の治定では、箸墓の被葬者を第7代孝霊天皇皇女の倭迹迹日百襲姫命としている。近年の考古学や文献史学の発展により、本著は、「邪馬台国はヤマト国で、邪馬台国の中核は畿内の大和にあり、その中心は纏向遺跡で、卑弥呼は3世紀半ばに亡くなり箸墓に葬られた」と考える畿内説を採る。従って、倭迹迹日百襲姫命が卑弥呼であると云う推察を起点に歴史を遡り、あるいは辿り、多くの様々な史料、文献、書物やインターネット(Net)情報並びに近年著しく発展した古代人のDNA 解析を含む考古学・人類学の膨大な知見を整合性をもたせるように統合することによって、旧石器時代から飛鳥時代までの『古の日本(倭)の歴史』Net 解説論文(https://www.yasutarofujita.com/)を構築した。
『古の日本(倭)の歴史』は、5部構成、「第1部 旧石器時代・縄文時代 概略、第2部 弥生時代早期・前期・中期 概略、第3部 弥生時代後期(大己貴の国・邪馬台国) 概略、第4部 古墳時代前期・中期 概略、第5 部 古墳時代後期・飛鳥時代 概略」となっている。このうち、弥生時代後期・邪馬台国・古墳時代前期(神武から応神東征まで)については、文献史学的あるいは考古学的証拠が乏しいにもかかわらず、著者が推敲を重ねたうえでの直観に基づく、多くの未解明の歴史的事象を高い蓋然性を以て説明し得る斬新な歴史観を提示している。各部は、その時代の東アジアの情勢と倭の状況を解説し、個々の事象を図表・イラスト・写真を多く取り入れて説明する。その中に著者の見解を散在させている。これらの図表・イラストやその説明の多くは著書・文献・Net 情報から引用したものである。この『古の日本(倭)の歴史』というNet 解説論文で新たな知識が得られたり、あるいはインスピレーションを覚えられたら、このNet 解説論文を引用して頂ければ幸いである。
以上は『古の日本(倭)の歴史』 初版(2019 年1 月公表)の序論である。初版公表以来2 年、2021 年1 月には改訂版、さらに2023 年6 月には最新版(https://www.yasutarofujita.com/about-1)を公開した。(本歴史はPowerPoint(のちにPDF)ファイルとして公開しており、初版は384 スライドから成り立っていたが、最新版は501 スライドと内容を大幅に充実させた。)初版の公表以来4 年余り、古代史に造詣が深い諸姉兄から数々の高説、異論あるいは貴重な歴史資料を頂き、改訂の参考にさせて頂いた。また、過去4 年、自ら本歴史に関連する数十回の長文のFacebook(FB)投稿を行っており、これらの投稿は全て筆者(藤田泰太郎)のタイムラインにリストされている。これらFB 投稿を通じての同好の士との活発な議論・討議を重ね、本歴史をより洗練・充実させることが出来た。
縄文時代は、1万年以上継続した持続可能な「森と水の文明」(狩猟、採取/ 栽培と漁撈)として世界に冠たるものである。この縄文文明を日本文化の基層となっていると捉え、かつヒトのDNA 解析を駆使して明らかにされた「日本人成立のモデル」を提唱した。さらに、これまで混沌としていた「紀元前1世紀より4世紀までの倭国の歴史」をイザナギ・イザナミから始まる天津神(すなわち皇統)の系譜として捉え、具体的な年代に基づく歴史として提示することが出来た。そして、この紀元前1~4世紀の倭国の歴史を天津神による倭国平定の歴史として再構築した。
『古の日本(倭)の歴史』の最新版も初版や改訂版と同様に、幾多の考古学的知見を忠実に反映しており、また日本国の正史と考えられる『記紀』をはじめ中国や朝鮮の正史と見なされる歴史書に記載の史実と解釈上の齟齬があるかと思うが、矛盾するところはない。かつ、ヒトのDNA 解析や人類学などの自然科学的知見とも充分に整合性がとれている。しかしながら、『 記紀』の神代の記述(神話とされる)は、なんらかの史実を反映したものとは思うが、飛鳥時代の皇族や藤原氏をはじめとする有力氏族の都合のいいように改竄されていると思われる所が多々あることも事実である。
この度の最新版の公表で、『古の日本(倭)の歴史』の全貌をほぼ解明できたと考えている。しかし、『古の日本(倭)の歴史』の紀元前1~4世紀の倭国の歴史の構築に見られるように、自らのかならずしも完璧でない古代史の知見に基づいた直観と洞察により推察・構成した大胆な仮説を含み、すべてが実証されたものとはとてもいえない。将来、古代史研究者や考古学者により本歴史が順次実証されていくことを切に願っている。本最新版に対しても諸姉兄からの更なるご教授や意見を頂き、『古の日本(倭)の歴史』をさらに洗練・充実させることができれば幸甚の極みである。
令和6年 新春 藤田泰太郎
- 「古の日本(倭)の歴史」(Web 最新版)の書籍化に当たって
- はじめに
- 参考資料(著作、図説、その他)
- あとがき