改訂新版
俺、マジダメかもしれない…
急性リンパ性白血病で逝った最愛の息子が残したもの
著 | 高野由美子 |
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判型 | 四六頁:275 |
ISBN | 978-4-910135-05-2 |
発行 | 2023年9月 |
POD | 1,980円(本体1,800円+税)
在庫:○
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電子版 | 990円(本体900円+税)
在庫:○
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「敏行、今かなり厳しい状態です。お願いがあります。トムくんからできるだけたくさんの仲間に頼んで、メールして励ましてやってほしいと言ってもらえませんか? ぜひ、お願いします。今は敏行の生命力がすべてです。生命力に賭けるしかありません。お願いします」
敏行が亡くなる前の日だった。朝、主治医の石黒先生に再発したと言われ、ドナーの骨髄に頑張ってもらうしか治療法がないと宣告された時、とにかく敏行の生命力、気力、奇跡を信じるしか道はなかった。母親として何もしてやることができなかった。ただ、そばにいて、励まし勇気づけることだけ。私にできたのは敏行の仲間から、たくさんの頑張れメールを送ってもらうこと。それくらいしかやってあげられなかった。敏行の持っている生命力、免疫力が高められれば……そう思った。
敏行が保育園、小・中学校、高校、行くはずだった専門学校。そこにはずっと一緒だった仲間の西村都武くんがいた。トムくんの母親のひろみさんとも保育園からの付き合い。私はどうしようもなく辛い時、話を聞いてもらいたい時、ひろみさんによくメールや電話をした。敏行のことでトムくんにお願いがある時にもひろみさんに頼んでいた。本を書くことの後押しをしてくれたのもひろみさんのお母様だ。西村家には本当にお世話になった。
10カ月の壮絶な闘病生活、過酷だった治療、敏行の最後の日を絶対忘れないように、毎日毎日必死になって思い出していた。毎日毎日……「あの時すごく辛かったんだよね。分かってあげられなくてごめんね。何のためにずっとそばに付いていたんだろうね。何の役にも立たないお母さんだったね、ごめんね」なぜ、あの時こうしてあげなかったのか、なぜもっと優しくしてあげることができなかったのか、なぜもっと……思い返すとだんだん後悔が積み重なってきた。毎日必死に思い出そうとしなくても済む方法はないだろうか? そして思いついたのは、文章として残すということだった。
「文字にして残せばいい! 敏行のすべて、私の思っていることのすべてを書いて閉じ込めてしまえばいい! そうだ、本を書こう!」
これでもう、わざわざ思い出そうとしなくて済む。本を開けば、その時のことが鮮明に蘇る。それでいいと思った。
だが、私に文章が書けるだろうか? 長文を書いたことのない私が、言いたいことが伝わる文章を書けるのだろうか? 大それた挑戦だけど、敏行の中身の濃い、人の何倍にも濃縮された18年をどうにかして形に残したかった。18年間、一生懸命生きた証を。
私自身、敏行の死のすべてを書き留めない限り、私の中では何も終わらないと思った。私が毎日書いていた日記は敏行が元気になったら 「お母さんの気持ちはこうだったんだよ」って見せてあげるために書いていたもの。こんな形で本となり残すことになるとは、思いもしなかった。
敏行、白血病を克服した喜びを分かち合いながらこの日記を二人で見たかったね……。
- はじめに
- 敏行、誕生
- 念願の高校に入学
- 忍び寄る悪魔
- 闘病記録① 8月31日~3月3日
- 闘病記録② 3月4日~6月27日
- 「俺、マジダメかもしれない……」
- 6月28日(火) 最後の日
- 6月29日(水) お通夜
- 6月30日(木) 告別式
- 中学時代の恩師 板垣先生の弔辞
- 友達の弔辞
- 一周忌 追悼コンサート
- 国際メディカル専門学校看護科 戴帽式
- 「あおぞらの会」
- 健康な心
- そして丸四年の歳月が過ぎ
- 本書に寄せられた声
- 改訂版2023年9月発刊の経緯
- 高野敏行君の骨髄移植から18年が経過して思うこと
- 高野由美子さんへ
- おわりに