英文法を理解する
1.最初から順番に読むことで英文法の理解を深めていけるよう全体を構成。
2.重要な構造は視覚的に強調し、特に修飾・被修飾関係を重視。
3.文構造から意味を解釈することを促し、例文はなるべく文構造に沿って和訳を提示。
4.文法理解を促すために、実際に英語学習者が書いた英文を例文として多く掲載。
これまでの文法書とは異なる本になっている。対象は初級者を念頭に、全ての使用語彙に和訳を載せ、できるだけ英語の構造に沿って意味を捉えられようにも心がけ、英語を初めて本格的に学ぶ方だけでなく、久しぶりに学習を再開する方にも読んでいただきたい一冊。
著 | 志手和行 |
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判型 | B5頁:128 |
ISBN | 978-4-910135-11-3 |
発行 | 2024年8月 |
定価 | 1,980円(本体1,800円+税)
在庫:×
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次の英文を読んでどのような意味なのかを考えてみて下さい。
Do you know that that that that that man used there was wrong?
この本で伝えたいことがこの1つの英文に凝縮されていると言っても過言ではありません。「間違った、不正な」という意味のwrong以外は通常中学一年生で学ぶであろう英単語から成り立っています。しかしながら、正確に意味を解釈することが非常に難しいことに気付いたのではないでしょうか。たとえ知らない単語があっても辞書があればその意味を調べることができます。それでも理解できないのは何が原因かと言うと、単語の文中における働きを把握できていない、もしくは誤って理解していると考えられます。上記文中のthatがその具体例と言えます。合計で5つあり、連続して並んでいるこの単語は働きがそれぞれ異なります。ではどのように違うのか区別するにはどうしたらよいでしょう。この目的を果たすのが英文法の知識です。
単語を知っているということは語彙力を有していると言えます。この語彙力は文法力と密接に関わり合っています。ただし語彙力は辞書の活用で補うことが可能です。ところがどんなに優れた辞書を使っても文法力無しではそれを活かすことができません。翻訳ソフトが良い例でしょう。単語単位での翻訳ならば正確な訳語を取り出せることが期待できますが、長く複雑な文となると出来上がった訳文は直さない限り理解が不可能な場合が多く見受けられます。ある検索エンジンの翻訳サービスを通じて試してみましょう1)。
知ってるあの男にして使われることがあったがおかしいのですか?
意味不明の日本語で訳文として出てきました。どのような過程を経てこのような非文が出てきたのかはわかりませんが、結果として産出された訳文は正しい文法規則を使用して作られたものではないということが言えるでしょう。語彙力と文法力は相互に関連しています。翻訳ソフトに限らず、我々外国語学習者においてこのどちらかの不足により、この訳文のような非文を生み出す結果になると捉えることもできるでしょう。
この本では以上述べた内容を問題提起として英文法を取り扱っていきます。持っている語彙力を活かせるようにするためにどのような文法力が必要なのか、という視点から説明したいと思います。この本を読み終えた後、上記例文を理解できるようになっていることがこの本の執筆の目標と言えます。そのためにも説明に終始することなく例文を豊富に併記する形で本書の構成を進めていき、文法知識とその運用能力の増強を図っていければと思っています。
本書の読み方
本書では以下のような特徴があります。
1.最初から順番に読むことで英文法の理解を深めていけるよう目指しています。
2.文構造から意味を解釈することを強調するために、例文はなるべく文構造に沿って和訳を載せています。
(例文に矢印(⇒)が付いている場合、日本語らしい訳にしていくことを意味します。)
3.重要な構造は四角の枠で囲み、特に修飾・被修飾関係を明確にするために矢印を多用しています。
4.実際に英語学習者が書いた英文を積極的に例文として載せることで、文法の理解を促そうとしています。
1)翻訳ソフトは日進月歩であり、今回使用したものと異なり翻訳結果が相応しいものとなる可能性があることご承知おきください。
- はじめに
- 1.5文型
- 2.品詞
- 2-1.5文型と修飾関係
- 2-2.各品詞の説明
- 2-3.「句」と「節」
- 1.語順
- 1-1.句についての語順
- 1-2.節についての語順
- 1-3.文の種類に関する語順
- 2.主語・動詞の関係(動詞に主な焦点をあてて)
- 2-1.人称・数の一致(be動詞と一般動詞の違い)
- 2-2.動詞の区分
- 2-3.動詞の活用形の種類
- 3.態
- 3-1.能動態と受動態の区別
- 3-2.受動態が表す時制
- 4.時制・相
- 4-1.時制と相が表すことのできる形
- 4-2.進行相と完了相の形
- 4-3.時間軸による捉え方
- 5.助動詞が伝えるニュアンス
- 5-1.主な助動詞とその意味
- 5-2.疑問形で表すニュアンス
- 5-3.各助動詞が表す推量表現
- 6.述部の展開―不定詞(その1)・動名詞(その1)・接続詞(その1)・原形不定詞(その1)・分詞(その1)
- 6-1.一般動詞からの展開(目的語としての役割)
- 6-2.一般動詞からの展開(本動詞の目的語の後に不定詞または動名詞と共に)
- 6-3.感覚・使役動詞からの展開(原形不定詞・分詞(その1))
- 6-4.一般動詞からの展開(本動詞の目的語と他の分詞と共に)
- 7.名詞[代名詞](その1)・動名詞(その2)・不定詞(その2)=名詞の働きをするもの
- 7-1.名詞における可算・不可算の区別
- 7-2.代名詞における「数」「人称」「格」の捉え方
- 7-3.名詞としても働く動名詞と不定詞
- 8.冠詞・形容詞(その1)・不定詞(その3)・分詞(その2)・前置詞(その1)=名詞を修飾・説明するもの
- 8-1.名詞を限定する働きを持つ冠詞
- 8-2.名詞に前置あるいは後置して修飾する働きをもつもの
- 9.関係節(関係代名詞・関係副詞)
- 10.比較(その1)
- 11.名詞[代名詞](その2)・動名詞(その3)・形容詞(その2)
- 11-1.補語としての名詞表現(名詞[代名詞](その2)・動名詞(その3))
- 11-2.補語としての形容詞表現(形容詞(その2))
- 12.副詞・不定詞(その3)・分詞(その3)
- 12-1.主に動詞、文を修飾するもの(副詞)
- 12-2.動詞、形容詞、文を修飾するもの(不定詞(その3))
- 12-3.文を修飾するもの(分詞(その3))
- 13.比較(その2)
- 13-1.形容詞による比較表現
- 13-2.副詞による比較表現
- 14.接続詞(その2)・前置詞(その2)
- 15.仮定法
- 〇動詞の活用形/〇名詞の複数形/〇形容詞・副詞の比較級と最上級/〇発音についての補足
- 参考文献
- おわりに